2018年度 卒業論文
題名:日本全国のラーメン二郎店舗位置情報オープン化の実践
Title:Contributing for Ramen Jiro shop geolocation dataset as open data in Japan
2019年1月10日
青山学院大学 地球社会共生学部 地球社会共生学科
渡邊結南
学籍番号:1A115270
指導教員:古橋大地 教授
概要
全体構成(IMRAD)
Introduction:
本来、中国由来の麺文化である「拉麺(らーめん)」は、日本に伝播する過程の中で独自の進化を遂げ、日本の「ラーメン」という食文化を確立し、2019年現在、代表的な日本の文化の象徴として、広く親しまれている。 その中で、1968年に創業した東京都港区三田を拠点としている「ラーメン二郎」というラーメンブランドが存在する。こってりとした味付けと、満腹感を重視したコストパフォーマスの良いラーメンを提供する店舗だ。ラーメン二郎は、三田での創業以降、独特の味つけと提供方法で、日本のラーメンの中で、「二郎系」という1つのジャンルを確立した。2019年現在、ラーメン二郎は日本に40店舗存在し、暖簾分けシステムというシステムの中で、日本各地に店舗を広げている。これらの二郎系ラーメン愛好家は「ジロリアン」と呼ばれ、各地の二郎系店舗を食べ歩き、その情報共有ウェブサイトも数多く存在する。 一方で、ラーメン店舗マップとしてラーメン二郎の位置情報が日本全国網羅され、二次利用可能なオープンデータ化がされている例は見当たらない。ラーメン二郎のアプリやマップを作る上で、そのデータをオープンに公開・共有することは車輪の再発明と呼ばれる現地調査重複の無駄を省き、ジロリアンらの活動を支える基礎資料となる。併せて、それらのデータを共有するために必要なプラットフォームには何を選択すべきか検討を行い、OpenStreetMap(以下OSM)データベース内への格納が現実的であると判断し、現地調査によって得られた日本全国のラーメン二郎店舗情報をマッピングする意義と、その手法検討を行った。 以上のことより、本研究では、OSMのオープンな地理空間情報プラットフォームを用いて、日本全国のラーメン二郎店舗データ、およびそのメタデータを整理、網羅することによって、誰もが自由にラーメン二郎店舗データにアクセスし、再利用することが可能な状況を構築することを試みた。
Methods:
OSM上のラーメン二郎の整理されていなかった店舗情報を整理した。 全40店舗(2018年10月時点)の中で
- OSM TagInfo内で ”ラーメン二郎” と検索してヒットする name タグ件数が31件
- その中で、POI店舗情報(Node)が既にOSM上に存在していたが22件
- 既存の22軒の ”ラーメン二郎” POIデータのうち amenity=fast_food として登録されていた店舗が11店舗、amenity=restaurant として登録されていた店舗が11店舗であった。
- cuisine=ramenとして登録されていたPOIが12店舗
- cuisine=noodleとして登録されていたPOIが4店舗
- cuisine=noodle;ramenとして登録されていたPOIが1店舗
- cuisine=jiro;ramenとして登録されていたPOIが1店舗
-
未入力が4店舗であった。
- 建物として登録されておらず、道路として登録されているケースが存在した
- 営業時間を記述する Opening_hours タグの表記がない、または間違っているデータが存在した
- 多言語名称、とくに英語表記の未登録が多く存在した
- 本来とは違った場所に登録してあった といった問題があった。
以上を踏まえ、誤った情報や、未登録の店舗をOpenStreetMapに修正・書き込みを行った。また、AmenityやCuisine、Opening_Hours、多言語表記については、“どの表記が一番ふさわしいか”を議論する必要があったため、オンラインブログを活用してその作業状況を随時報告した。また、Opening Hoursに関しては、Facebookの「OpenStreetMap Japan Community」グループ及びTwitter上で #OSMjp のタグをつけて質問し、経験豊富なOSMのマッパーらに確認した。いただいた意見を基に OSM上のデータを書き換え、統一されたタグセットとして情報を更新した。
Results:
現在営業中であるラーメン二郎全40店舗の店舗情報を全て整理し、OSM上に公開した。情報源は現地調査(source=survey)であり、公開されたデータのライセンスは ODbL となる。
Discussion:
主な論点は次の3点である。
1) ラーメン店として amenity=fast_food と amenity=restaurant のどちらのタグがふさわしいのか比較検討した。具体的にはそれぞれの定義をOSM wikiで照らし合わせながら検討し、自分の見解をブログで公開。結論として amenity=fast_food を選択した。
2) cuisineタグとして適切な value の検討を行った。今までOSM上でラーメン二郎にタグ付けされていたワードの定義をOSM wikiを参照しながら検討し、既存の ramenタグのみでは独特のラーメン文化を持つラーメン二郎を表現しきれていないことから、既存のcuisine=jiro という非公式タグを入力されている事例も踏まえて cuisine=ramen;jiro という組み合わせのタグセットを提案しすべてのラーメン二郎POIデータに試験的に入力した。
3) 適切なOpening_hoursの表記方法について検討を行った。特に、ラーメン二郎池袋東口店の休業日条件が「月曜日が祝日の場合、翌日火曜日休み」であり、Opening_hours 表記方法のルールに則り「Tu-Su,PH 11:00-23:00; PH +1 day Tu off」のように表現すべきと判断した。併せてこの表現が間違っていないか、Facebookグループの「OpenStreetMap Japan Community」及び Twitter上の #OSMjp ハッシュタグを用いてOSM経験者に質問、確認。賛同を得られた。
Conclusion:
本研究を通じて、筆者が現地調査を基に収集したラーメン二郎40店舗分の地理空間情報をOSMデータベース内に登録し、既存データの見直しも行い、そのタギングルールを統一させた。また、今後ラーメン二郎の店舗出店及び閉店などの変化や、二郎系と呼ばれる類似のラーメン店等についての情報をOSM上で編集していく際のリファレンスを作ることができた。
課題として、長期の臨時休業など、各店舗の生の情報を見ないとわからないような情報を継続的にどれだけ早くOSM上に反映させていくか。また、筆者が独自に作り出した、cuisine=jiro タグの提案/承認プロセスの実施が挙げられる。
本文
題名:日本全国のラーメン二郎店舗位置情報オープン化の実践
Title:Contributing for Ramen Jiro shop geolocation dataset as open data in Japan
目次
1.はじめに
2.2018年10月時点でのOSM入力情報
3.実施したこと
4.ラーメン二郎のamenityは ”restaurant” と ”fast_food” どちらが適しているのか?
5.ラーメン二郎のcuisineには何と入力するべきなのか
6.Opening_hours の入力
7.英語名称について
8.今後の課題
はじめに
1.ラーメンとは
近年、代表的な日本の文化として国民に愛されている食事、ラーメン。(始まりは1665年頃に中国から招いた儒学者が作った「汁そば」を水戸黄門が食べたことだとされている。しかしこれは流行らず、)1872年、明治維新によって横浜、神戸、函館、長崎に流れ込んだ華人が、中華街で中華麺を使った食堂を作り始め評判になったことから、日本人はラーメンの味を知ったとされる。
その後ラーメンは日本の中で独自の進化を遂げ、1910年、日本で初めてのラーメン屋「来々軒」が浅草にオープンし、その後も札幌ラーメン、喜多方ラーメンなどが生まれる。1958年には、安藤百福がインスタントラーメンを発明し大ヒット、1971年にはカップラーメンが生まれ、1976には中華麺の生産量が日本麺の生産量を超えた。
1980年代以降、度々〇〇ラーメンブームが起こるようになり、様々なラーメンのジャンルが生まれる。 とんこつラーメンや魚介だしラーメンなど、出汁によって組み分けられるもの。 家系や二郎系など、その独特なスタイルからジャンルを確立させたもの。 つけ麺、油そばなど、ラーメンから派生したもの。1
このラーメンブームに乗っかり、ラーメンスタジアムや、ラーメン博物館といった、ラーメンに関するアミューズメントパークも日本各地に生まれた。また、ラーメンを使った観光業やラーメン本、ラーメンマップ、ウェブサイトも増加し、2019年現在、ラーメンは日本の国民食とも言える存在になり、共に広く親しまれている。
1. ラーメン二郎とは
ラーメン二郎とは、東京都港区三田を拠点としているラーメンチェーン店のことである。 創設者、店主である山田拓美は1968年に「ラーメン次郎」を創業。その後、2度の移転を経て、名前は「ラーメン二郎」となり、現在は慶應義塾大学三田キャンパスの隣に店舗を構える。2 スープは株式会社エフゼットによって提供される「ラーメン二郎専用醤油」を使用しており、豚骨醤油ベースでとてもこってりしたものである。麺は小ラーメンで標準茹で前300gほどあり、これは一般的なラーメン屋の2倍である。麺の上には”ヤサイ”と呼ばれる茹でたモヤシとキャベツ、そして”豚”と呼ばれる分厚いチャーシューが2枚乗せられている。 さらに、好みにより
- ニンニク(刻みニンニク)
- ヤサイ(モヤシ、キャベツ)
- アブラ
- カラメ(スープの味の濃さ) を増すことができ、これらを頼む時の呪文のようなワードを”コール”と呼ぶ。 基本的にテーブル席はなく、喋りながらゆっくりと食べることはタブーとされる。
これらの独特な文化はたちまち人気となり、2019年現在、首都圏を中心に40店舗を構えるまでとなった。加えて、「二郎系」という1つのジャンルをラーメン界に生みだし、ラーメン二郎愛好家のことを指す「ジロリアン」という言葉も生まれた。ジロリアンは各地のラーメン二郎を食べ歩き、各店舗の二郎の味を評論する。その情報共有ウェブサイトも数多く存在する。
また、ラーメン二郎は日本だけでなく海外でも注目され始めている。
2009年9月13日、英紙の「The Guardian」は「The 50 best things to eat in the world, and where to eat them」として50番目にラーメン二郎を取り上げた。3
また、ラーメン二郎ではないが、「二郎インスパイア」と呼ばれる、ラーメン二郎を模して作られたラーメン屋「夢を語れ」が 2012年9月、「Yume wo katare」としてアメリカのボストンにオープンし、連日絶大な人気を誇っている。4
1.OpenStreetMapとは
OpenStreetMap(以下OSM)とは、道路や建物などの地理データ情報を、誰でも自由に編集、再利用できることを目的としたプロジェクトだ。OSM上にあげられたデータは、Open Database(ODbL)で提供され、オープンデータとして利用することが可能である。 また、誰がいつ編集したかも記録されることから、HotTaskingManagerなどの災害時の地図情報改正に使われていたり、IngressやPokemonGoといった位置情報ゲームにも使用されている。
2.2018年10月時点でのOSM入力情報
店舗名称の表記
全40店舗中、「ラーメン二郎」と検索してヒットした件数は31件。 内、店舗情報(Node)がすでにOSM上に存在していたのが22件。
内、「ラーメン二郎 ○○店」というように、店舗名称が正しく表記されていたのは17件。
店舗名称が正しく表記されていなかった例
目黒店は、ラーメンがひらがなで表記されていたため、検索してもヒットしなかった。
荻窪店は「二郎」とだけ書かれていたため、ヒットしなかった。
府中店は正しく表記されていたが、OSM上だと英語表記が優先されて表示されていた。
地物の種類
全40店舗中、buildingとして登録されていたのは29件。 wayとして登録されていたのが2件。 refとして登録されていたのが1件。
川越店、栃木街道店はway として登録されていたため、ヒットしなかった。
相模大野店はrefとして登録されていたため、ヒットしなかった。
amenityの種類
店舗情報がOSM上にすでに存在した店舗は22件。
内、 amenityが
”fast food”として登録されていた店舗が11店舗
”restaurant”として登録されていた店舗が11店舗
であった。
cuisineの種類
店舗情報がOSM上にすでに存在した店舗は22件。
内、 cuisineが
”ramen”として登録されていた店舗が12店舗
“noodle”として登録されていた店舗が4店舗
”noodle;ramen”として登録されていた店舗が1店舗
”jiro;ramen”として登録されていた店舗が1店舗
未入力が4店舗
であった。
場所のズレ
荻窪店が実際に存在する場所は、レストランマークがついている少し右側の建物になる。
Opening_hours、多言語名称の未入力
このように、4年前は、amenity、cuisine、nameしかなかったものに対して 2回の編集を経て、情報が徐々に追加されているが、Opening_hoursや多言語名称は登録されていなかった店舗が存在した。
以上から、OSM上には十分なラーメン二郎の店舗情報が入力されていないと言える。
また、amenityやcuisineについては、意見が別れているので、議論をし、定義することが必要であると言える。
3.実施したこと
- 店舗名称を「ラーメン二郎 ○○店」に統一した。
- 英語表記を「Ramen Jiro ○○」に統一した。
- amenity=fast_food
- cuisine=ramen;jiro
- 全店舗の住所を入力した。
- 全店舗のOpening_hoursを入力した。
- takeaway=no
- delivery=no
- drive_through=no
- smoking=no
- drive_through=no
- outdoor_seating=no
- source=survey
- branch=各支店名
これらを全ラーメン二郎40店舗に入力した。
4.ラーメン二郎のamenityは ”restaurant” と ”fast_food” どちらが適しているのか?
restaurantとfast_food それぞれのOSM上での定義を見ていく。
五十音順POIタグ一覧5によると
ラーメン屋は
・amenity=restaurant
とされている。
OSM wikiに記載6されている通り、fast_food は
素早いカウンターのみのサービス(支払いもカウンター)
-
食べ物が持ち帰り可能
-
プラスチックの容器
-
掃除しやすいテーブルと椅子
-
早くてカジュアルな場所 も含まれる
-
例として、マクドナルド、SUBWAY、Chipotle Mexican Gril があげられる。
と記されている。
一方restaurant7はこうだ。
-
座席がある
-
ウェイターが給仕
-
一式の食事を提供
-
フォーマルなレストランのためのもの
-
許可制の場所では酒類の販売免許を所持
また、「併用されるタグ」の欄には
drive_through=yes -レストランにドライブスルーがある。代わりに amenity=fast_food を検討してください。 という記載がある。
これらを踏まえ、4つの視点からラーメン二郎と比較していく。
素早いカジュアルなサービス
ラーメン二郎は全店舗食券制なので、「支払いもカウンター」には当てはまらないが、食券制は支払いの過程を簡略化していると考えると、fastfoodに属されていいだろう。(全店舗カウンターだけというわけではないので、それについては後記述する)
二郎の場合はプラスチックの容器ではなくガラスでできたどんぶりだが、食べ終わった際には客が自分でどんぶりをカウンターに置き、カウンターに置いてある台拭きで自分の食べた部分を拭くのがルールだ。
基本的に二郎はウエイターが給仕しているわけでもなく、水、掃除もセルフサービスである。店内には店主、助手、バイトがいるが、基本的にカウンターの中から出ることはほぼない。
これらも、全て過程を簡略化してあるからであるため、フォーマルな場所というよりも、早くてカジュアルな場所=fast_foodと捉えることができる。
持ち帰り制度について
食べ物(二郎の場合はラーメン)の持ち帰り制度は基本的にない。ただ、「鍋二郎」というサービスは持ち帰りに近いと言える。鍋二郎とは、鍋を持参し、その鍋に麺、ヤサイ、豚、スープを入れてもらい、店以外の場所で食べることだ。
ただし、このサービスをしている店舗は限られており、その中でも、毎日している店舗と期間限定の店舗がある。
例えば、八王子野猿街道店2では、中央大学が近くにあるため、中央大学の学園祭がある期間に鍋二郎を開催することが多い。
また、相模大野店では、W杯の日本代表戦の日にだけ鍋二郎を開催する。
このように、不定期に鍋二郎を開催する二郎が多数ある。
この鍋二郎、私もやったことが何回かあるのだが、気軽に持ち帰ってさらっと食べるというよりは、複数人と食べるイベントごとのようなかんじになる。
鍋二郎というサービスはあるが、俗に言うテイクアウトのようなサービスではないため、これはfast_foodにもrestaurantにも該当しないだろう。
ドライブスルーが可能な二郎は存在しない。
酒類の販売について
酒類を販売している二郎は私が把握している限り4店舗ある。西台、小滝橋、歌舞伎町、小金井だ。
小金井では瓶ビール、西台では缶チューハイ、缶ビールを提供している。
ただし、私の経験上、二郎で酒を飲みながらラーメンを食べている人はほぼみたことがない。ただでさえ量が多いラーメンと、腹が膨れる酒を一緒に頼もうという人はなかなかいないだろう。「早く食べなければいけない、ロットを乱してはいけない」という暗黙の了解もあるから尚更だ。待ち人がいなく、空席がある状態ならゆっくり飲んでも大丈夫だろう。
酒類の販売はしているが、酒を飲みに来る人少なく、置いている店も少ないので、restaurantに当てはまるとはいえないだろう。
カウンター席とテーブル席について
基本的に二郎はカウンター席のみの店舗が多いが、テーブル席が存在する店舗も多々ある。
栃木、小金井、野猿の街道系3つ、新潟、小滝橋である。
会津若松に関しては座敷の席がある。
新潟、会津若松に関しては、二郎では一般的な着丼前にコールを聞かれるのではなく、テーブル席、座敷に着席した時点でコールを聞かれる。
その他の店では、着丼直前に一回店員がコールを聴きにきて、そこから着丼といった順序である。
テーブル席のみの二郎はなく、必ずカウンター席が存在する。また、テーブル席がある店舗もテーブルは1つか2つで、どの店舗も席数はカウンター席のほうが圧倒的に多い。
また、二郎は回転率を大切にしているため、仮に複数人でテーブル席がある店舗に行っても、テーブル席に案内されるとは限らない。子供づれのグループをのぞいて考えれば、一番効率のいいように回る席に案内される。
二郎はカウンター席がほとんど、テーブル席があっても、そこに案内されるとは限らない、これらのことを踏まえると、ラーメン二郎はrestaurant ではなく fast_food のほうが適していると考えられる。
これら4点を踏まえると、ラーメン二郎につけるべきamenity のタグは
restaurant ではなく、fast_food に統一するべき
と結論づけた。
5.ラーメン二郎のcuisineには何と入力するべきなのか
amenityとは違って、複数の選択肢があるcuisineだが、どのように表記するのがふさわしいだろうか。
cuisineとは、飲食が可能な場所で提供される、料理の種類を記述するもの。8
noodle:日本、中国、韓国の麺料理。日本のうどん、蕎麦、ラーメン、中国の担々麺、タンメン、韓国の冷麺、ビビン麺を含む。東アジア地域で一般的な料理だが、世界中に広まりつつある。9
五十音順POIタグ一覧によると
ラーメン屋は
-
cuisine=noodle;ramen
-
cuisine:ja=ラーメン
とされている。
OSM上でラーメン二郎につけるべきcuisineタグはどれか?
ラーメン二郎には
-
麺(noodle)
-
ラーメン(ramen)
-
二郎系(jiro)
この3つの要素がある。この中でシンプル且つわかりやすくラーメン二郎をタグづけするにはどのタグを選べばいいのか。
各ワードの知名度・表現度
この3つのワードを細かくしていくと
-
noodleの中の1つの種類であるramen
-
ramenの中の1つの種類であるjiro
となる。noodle>ramen>jiro ということだ。
つまりは
「ramen」というワードを世界中の人が「noodle」の一種、と知っているのならば、
「ramen;jiro」というタグがつけられればとてもシンプルでわかりやすくなる。
ラーメンにも、家系、博多系、二郎系などの様々な種類がある。その中で、すぐに「二郎系のラーメン屋」とわかるためには、すでに1つの店舗で使われている「jiro」というタグを採用するのが一番わかりやすいのではないか?
結論、OSM上でのラーメン二郎につけるべきcuisineのタグは
「ramen;jiro」が最適だと考える。
6.Opening_hours の入力
各店舗の営業時間を入力するのに、「Opening_Hours」という形式を用いた。
Opening_hoursの書き方については基本的に
を参考にしている。
そこで直面した問題は
-
京都店の休業日→祝日の翌日が休み
-
池袋東口の休業日→月が祝日の場合は翌日が休み
この表記が非常に難しいということ。
先ほど記載したWikiを参照すると、祝日休業は「PH off」と書かれる。
また、週の範囲では「+」「−」が使われていること、変動日は「n days」と表されてることから、これらの記号を組み合わせて使用することは可能だと考える。
よって、京都店の休業日「祝日の翌日が休み」に関しては「PH +1 day off」と表すことができる。
問題は池袋東口店だ。「月曜日が祝日の場合、翌日火曜休み」。
Opening_Hoursの定義をよく見ると半角スペースは論理積ANDを意味することがわかった。また「月曜日が祝日の場合の翌日火曜」という条件は、言い換えると「祝日の翌日が火曜」とも置き換えられる。そこで 祝日の翌日を PH +1 day とし、それが火曜である Tu との論理積AND として PH +1 day Tu で「祝日の翌日が火曜」という条件が表現できたと考える。最後にこの日が休みであることで off を付け「PH +1 day Tu off」と表すことができると考えた。
実際に Facebook と Twitter で、この考え方で正しいかOSMコミュニティに公開質問をしてみた。
「PH +1 day Tu off」の表現は問題なさそうである。また、Opening_Hours の検証ツールも教えていただいた。(https://t.co/SfaPpv1bg3)
よって、池袋東口店のOpening_hoursは「Tu-Su,PH 11:00-23:00; PH +1 day Tu off」と入力した。
7.英語名称について
2014年9月4日、米Tesla MotorsのCEOであるイーロン・マスク氏は、2014年9月7日、ラーメン二郎 新宿歌舞伎町店に訪問し、一時話題となった。11
加えて、2011年11月19日には、当時のブータン国王夫妻が「ラーメン二郎を食してみたい」との要望で、ラーメン二郎 目黒店の昼の部が臨時休業となり、話題となった。12
「1.ラーメン二郎とは」にも述べたように、2009年9月、英紙ガーディアンも「世界のおいしい料理50選」としてラーメン二郎を取り上げている。
このように最近ラーメン二郎は、海外からの注目も浴びているのだ。
その中で必要となるのが、「多言語名称」、「英語名称」である。
OSM上で地物のタグ編集をする際に、「多言語名称」を登録することができる。
そこでの表記方法をどのように統一するか。
“海外の人はどのようにラーメン二郎」を検索するのか” という観点から考えてみた。
Cuisineのタグについて論じた時のように、「ラーメン」という言葉は世界中に広まっているということを仮定すると
「ラーメン二郎」という日本語名称は、そのままローマ字に訳し
「Ramen Jiro」で伝わる。
( “Ramen noodle Jiro” も考えたが、RamenとはNoodleの一種と
それにプラスして、その店舗名の地名のローマ字表記を記述する。
これにより、「ラーメン」「二郎」「○○店」を調べたい海外の人も、OSM上で調べることができるようになる。)
8.今後の課題
この研究を通じて、筆者が現地調査を基に収集したラーメン二郎40店舗分の地理空間情報をOSMデータベース内に登録し、既存データの見直しも行い、そのタギングルールを統一させた。また、今後ラーメン二郎の店舗出店及び閉店などの変化や、二郎系と呼ばれる類似のラーメン店等についての情報をOSM上で編集していく際のリファレンスを作ることができた。 課題として、長期の臨時休業などといった各店舗の生の情報を見ないとわからないような情報を、継続的にどれだけ早くOSM上に反映できるかはジロリアンコミュニティからの情報連携は重要であると考えられる。
併せて、cuisine=jiro という独自タグを提案し、仮に入力してみたが、このタグはOSM公式タグとしてグローバルで認められたものではない。OSM公式地物タグとして定着させるには次に述べるいくつかの提案/承認プロセスが必要である。13 14 まずは、特筆性を提示し、提案ページを作成する。提案ページを公開し議論を経て、2週間以上経過したのち、投票を開始する。ここで、74%以上の十分な支持を獲得できれば、新しいタグとしてOSM内で承認される。ここに書いた提案プロセスはあくまで概要なので、詳しくはOSM wikiを参照してほしい。本研究ではOSM公式タグ提案までのプロセスまでは実施できていない。
参考文献
2.ラーメン二郎館
3.The 50 best things to eat in the world, and where to eat them
4.Yume Wo Katare a spot to eat ramen
11.イーロン・マスク氏、ラーメン二郎は「非常に美味しかった」
13.JA:提案プロセス
14.JA:何でも好きなタグを